この記事では、システムの稼働率について、初心者にも分かりやすく、図解付きで丁寧に解説しています!
MTBFとMTTR
- 稼働率はシステムを導入したから正常に稼働している時間の割合。
- MTBFはシステムが正常に稼働している時間の平均値。
- MTTRはシステムが故障している時間の平均値。
- システム稼働率=MTBF÷(MTBF+MTTR)
直列接続と並列接続
- 直列接続とは、システムを一直線に接続する方法。
- 直列接続したシステム全体の稼働率は、接続している個々のシステムの稼働率を掛けた値。
- 並列接続とは、システムを並列に接続する方法。
- 並列接続したシステム全体の稼働率は、1から並列に接続しているシステムの故障率(=1-稼働率)を掛けた数字を引いた値。
システムの稼働率
システムの稼働率とは、システムを導入してから正常に稼働している時間の割合です。
例えば、システム導入から1000時間経っており、その内、正常に稼働している時間が950時間だとすると、システムの稼働率は95%になります。
MTBF(平均故障間隔)
MTBFは「Mean Time Between Failures」の略称で、故障と故障の間隔の平均値、つまり正常に稼働している時間の平均値を意味します。
MTTR(平均修理間隔)
MTTRは「Mean Time To Repair」の略称で、システムの復旧に必要な時間の平均値、つまり故障している時間の平均値を意味します。
MTBFとMTTRから稼働率を計算する
システムの稼働率はシステムを導入してから正常に稼働している時間の割合でした。
システムを導入してから経過した時間は正常に稼働している時間と故障している時間を足した時間です。よって、システムの稼働率はMTBFとMTTRを使ってこう表せます。
先程の例で計算すると、稼働率は66.6%になりますね。
直列接続したシステムの稼働率
直列接続とは、システムを一直線に接続する方法です。
直列接続をする場合、一直線上のシステムが全て稼働していないと、システム全体は稼働しません。
なので、システム全体の稼働率は直列接続しているシステムの稼働率を掛けた値になります。
例えば、稼働率が0.9のシステムと稼働率が0.8のシステムを直列接続したら、システム全体の稼働率は0.9×0.8=0.72=72%となります。
並列接続したシステムの稼働率
並列接続とは、システムを並列に接続する方法です。
並列接続をする場合、並列に接続したシステムのうち、1つでも稼働していれば、システム全体が稼働します。
並列接続の場合、全てのシステムが故障しているとき以外はシステム全体が稼働します。稼働率AのシステムAと稼働率BのシステムBが並列接続しているケースを考えてみましょう。
まずはシステムAとBが故障している確率(故障率)を計算してみます。例えば、正常に動いている確率が90%のとき、故障している確率は10%になりますよね。なぜなら、正常に動いている時以外は故障しているからです。つまり、システムAの故障率は(1-A)、システムBの故障率は(1-B)になります。よって、並列接続しているシステムが全て故障している確率は(1-A)×(1-B)になる訳ですね。
並列接続の場合、接続しているシステムの両方が故障している時以外は、システム全体が正常に稼働するんでしたよね。よって、システム全体の稼働率は、1-システムAとBの両方が故障している確率となるので、1-(1-A)×(1-B)が稼働率となります。
例えば、稼働率が0.9のシステムと稼働率が0.8のシステムを並列接続したら、システム全体の稼働率は1-(1-0.9)×(1-0.8)=1-0.1×0.2=1-0.02=0.98=98%となります。
基本情報、出るところだけまとめ!
MTBFはシステムが正常に稼働している時間の平均値。
MTTRはシステムが故障している時間の平均値。
システム稼働率はMTBF÷(MTBF+MTTR)で計算できる。
直列接続の場合、システム全体の稼働率は直列に接続しているシステムの稼働率を掛けた値。
並列接続の場合、システム全体の稼働率は、1から並列に接続しているシステムの故障率(=1-稼働率)を掛けた値を引いた値。
基本情報技術者試験での出題例
令和6年度問4
基本情報技術者
科目A 令和6年度問4
あるシステムの今年度のMTBFは3,000時間,MTTRは1,000時間である。翌年度はMTBFについて今年度の20%分の改善,MTTRについて今年度の10%分の改善を図ると,翌年度の稼働率は何%になるか。
ア 69 イ 73 ウ 77 エ 80
正解は”エ”
MTBFはシステムが動いてる時間、MTTRはシステムが故障している時間です。
MTBFが20%改善すると、3,000時間×(1+0.2)=3,600時間となります。
MTTRが10%改善すると、1,000時間×(1-0.1)=900時間となります。
稼働率はMTBF÷(MTBF+MTTR)なので、3,600÷(3,600+900)=0.80となり、答えはエです。
令和元年度秋期問16
基本情報技術者 午前試験
令和元年度秋期問16
2台の処理装置から成るシステムがある。少なくともいずれか一方が正常に動作すればよいときの稼働率と,2台とも正常に動作しなければならないときの稼働率の差は幾らか。ここで,処理装置の稼働率はいずれも0.9とし,処理装置以外の要因は考慮しないものとする。
ア 0.09 イ 0.10 ウ 0.18 エ 0.19
正解は”ウ”
少なくともいずれか一方が正常に動作すればよいときの稼働率
=1-(1-0.9)×(1-0.9)=1-0.1×0.1=0.99
2台とも正常に動作しなければならないときの稼働率
=0.9×0.9=0.81
よって、差は0.99-0.81=0.18です。
サンプル問題問14、平成31年度春期問14
基本情報技術者
科目A サンプル問題問14、午前試験 平成31年度春期問14
図のように,1台のサーバ,3台のクライアント及び2台のプリンタがLANで接続されている。このシステムはクライアントからの指示に基づいて,サーバにあるデータをプリンタに出力する。各装置の稼働率が表のとおりであるとき,このシステムの稼働率を表す計算式はどれか。ここで,クライアントは3台のうちどれか1台でも稼働していればよく,プリンタは2台のうちどちらかが稼働していればよい。
ア ab³c² イ a(1-b³)(1-c²)
ウ a(1-b)³(1-c)² エ a(1-(1-b)³)(1-(1-c)²)
正解は”エ”
システムの稼働率=サーバの稼働率×クライアントの稼働率×プリンタの稼働率です。
サーバの稼働率 =a
クライアントの稼働率=1-((1-b)×(1-b)×(1-b))=1-(1-b)³
プリンタの稼働率 =1-(1-c)×(1-c)=1-(1-c)²
なので、答えはエになります。
平成30年度秋期問15
基本情報技術者 午前試験
平成30年度秋期問15
東京と福岡を結ぶ実線の回線がある。東京と福岡の間の信頼性を向上させるために,大阪を経由する破線の迂回回線を追加した。迂回回線追加後における,東京と福岡の間の稼働率は幾らか。ここで,回線の稼働率は,東京と福岡,東京と大阪,大阪と福岡の全てが0.9とする。
ア 0.729 イ 0.810 ウ 0.981 エ 0.999
正解は”ウ”
問題の回線は実線の回線と破線の回線のどちらか一方が稼働していればOKな回線なので、
回線全体の稼働率=1-(1-実線の回線の稼働率)×(1-破線の回線の稼働率)です。
破線の回線は福岡-大阪間の回線と大阪-東京間の回線の両方が稼働する必要があるので、
破線の回線の稼働率=0.9×0.9=0.81です。
よって、回線全体の稼働率=1-(1-0.9)×(1-0.81)=1-0.1×0.19=0.981です。
平成29年度秋期問15
基本情報技術者 午前試験
平成29年度秋期問15
MTBFが45時間でMTTRが5時間の装置がある。この装置を二つ直列に接続したシステムの稼働率は幾らか。
ア 0.81 イ 0.90 ウ 0.95 エ 0.99
正解は”ア”
稼働率=MTBF÷(MTBF+MTTR)で求めることが出来るので、この装置の稼働率は45÷(45+5)=0.9です。
なので、この装置を二つ直列したシステムの稼働率は0.9×0.9=0.81です。
平成29年度春期問14
基本情報技術者 午前試験
平成29年度春期問14
稼働率Rの装置を図のように接続したシステムがある。このシステム全体の稼働率を表わす式はどれか。ここで,並列に接続されている部分はどちらかの装置が稼働していれば良く,直列に接続されている部分は両方の装置が稼働していなければならない。
ア (1-(1-R²))² イ 1-(1-R²)²
ウ (1-(1-R)²)² エ 1-(1-R)⁴
正解は”ウ”
並列部分の両方が稼働していなければいけないので、
システムの稼働率=並列部分の稼働率×並列部分の稼働率です。
並列部分はどちらかの装置が稼働していれば良いので、
並列部分の稼働率=1-(1-装置の稼働率)×(1-装置の稼働率)=1-(1-R)²です。
よって、システムの稼働率=(1-(1-R)²)²です。